こんにちは!今回は油の製造方法をざっくりと解説します!
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油の製造方法は大きく3つに分かれます
- 圧搾法
- 抽出法(溶剤抽出)
- 圧抽法(圧搾法+抽出法)
あなたが使われてる油は大きく分けると、このどれかの製法で作られています。
それぞれの製造方法の特徴やメリット、デメリットなんかをざっくりと解説していきます。
圧搾法
まずは圧搾法から。圧搾は「あっさく」と読みます。
原料に圧力をかけて油分を搾り出す製造方法です。茹でたほうれん草を手で握って、水分を搾り出すイメージと同じ。
強い圧力をかけて、油分を搾り出します。昔ながらの油の製造方法は「圧搾法」で、自然派の方が好むのがこの製法です。
圧搾法をより細分化すると‥
- 冷圧搾法(コールドプレス):低温でゆっくり圧力をかける
- 熱圧搾法:冷圧搾法よりも高温で圧力をかける
- 連続圧搾法:連続的に原料を供給し、圧力をかける
圧搾法でも非加熱式と加熱式で分かれます。
- 加熱すると風味を損ねたり、油が酸化する恐れがあります
- 非加熱の方が風味や香りが豊かで、酸化が少なく栄養価も高いです
- 加熱した方が油を多く搾れる
- 非加熱の方がコストが高い
連続圧搾法は効率が良く大量生産に向いているものの、油の品質はやや劣る可能性があります。
生産効率:連続圧搾法>熱圧搾法>冷圧搾法 ※搾れる油の量
生産コスト減:連続圧搾法>熱圧搾法>冷圧搾法
酸化しない:冷圧搾法>熱圧搾法>連続圧搾法
栄養価:冷圧搾法>熱圧搾法>連続圧搾法
- より自然な製法に近い
- 酸化が少なく栄養価も高い
- 風味や香りが豊か ※好みは分かれます
- 油分を全部搾り切れない
- 生産効率が良くない
- 大量生産に向いてない
- 購入価格は高くなる
溶剤や薬品などの化学物質を使用しないもしくは使用が少ないため、安心して使用できるのが自然派にとって嬉しい。
風味や香りが豊かで栄養価も高いのが圧搾法の特徴です。
※溶剤や薬品を使用するのが危険という意味ではないので誤解しないでください
抽出法
溶剤を使用して、油分を抽出する製造方法です。
ノルマルヘキサンという溶剤に原料を浸けると、油分が溶け出し溶剤に混ざります。油と溶剤が混ざり合った状態から、加熱処理をしてヘキサンを蒸発させて油分だけを抽出します。
ヘキサンは揮発性が高く、沸点も68.7℃と低く氣化しやすい特徴があります。そのため製品化される油の中には、ヘキサンはほぼ残留しません。
ヘキサンは石油由来の化合物で、大量に吸引すると神経系に影響があります。めまい、頭痛、吐き氣、意識混濁、麻痺などの症状が起こるリスクがあります。少量では人体に影響はありません。
氣化・蒸発しほぼ残留しない、少量では影響がないものの、危険な化学物質を使用していることが氣になる方はいます。自然派の方からすると抽出法は良く思われていません。
ただし原料に含まれる油分をほぼすべて抽出できるのが、この製造方法の利点です。
- 原料の油分をほぼすべて取り出せる
- 油分が少ない原料に向いている
- 生産効率が良い
- 生産コストが抑えれる
- 大量生産に向いている
- 購入価格を抑えれる
- 危険な溶剤の使用が氣にかかる
- 加熱処理で油が酸化する
- 圧搾法と比べて風味や香りが劣化している
効率よく油を取り出せるものの、溶剤や薬品を使っているのが氣にかかるのが抽出法です。
大量生産に向いているため、購入価格を抑えれるのが嬉しい。
圧抽法
圧抽法(あっちゅうほう)と読みます。
圧抽法は圧搾法と抽出法を組み合わせた製造方法です。
最初に圧搾法で油を絞り、絞り切れなかった油分を抽出法によって取り出せます。圧搾法で取り出している分、抽出法だけの油と比べると風味が豊かで栄養価も高くなります。
- 原料の油分をほぼすべて取り出せる
- 圧搾法には劣るが、抽出法よりも風味や香りが豊か
- 圧搾法には劣るが、抽出法よりも酸化が少なく栄養価もやや高い
- 抽出法には劣るが、大量生産に向いている
- 圧搾法よりもコストが抑えれる
- 圧搾の工程が増えるため、抽出法と比べコストがやや上がる
- 危険な溶剤の使用が氣にかかる
- 抽出法よりは良いが、圧搾法と比べて風味と香りが劣化する
- 抽出法よりは良いが、圧搾法と比べて酸化して栄養価がやや劣る
圧搾法と抽出法を組み合わせたハイブリッドな製造方法で、二つの製法の良いとこ取りされています。
しかし溶剤を使用しているのは変わりないので、自然派の方からは良く思われません。
油の製造工程
油の製造工程の流れをざっくりと解説します。3つの製造方法とも、基本的には同じ流れで製造されます。
①原料の準備 → ②搾油、抽出 → ③精製(ろ過) → ④完成
①原料の準備
- 選別: 品質の良い原料を選別します。
- 洗浄: 汚れや異物を除去します。
- 乾燥: 水分を取り除き、油の品質を保ちます。
- 粉砕: 圧搾しやすいように原料を細かく砕きます。
②搾油、抽出
- 圧搾: 機械で原料を圧縮し、油を絞り出します。
- 冷圧搾: 低温でゆっくりと圧搾し、風味や栄養を損なわずに油を抽出します。
- 熱圧搾: 高温で圧搾し、効率的に油を抽出しますが、風味や栄養が損なわれる可能性があります。
- 溶剤抽出: ヘキサンなどの溶剤を使って、油を溶かし出し抽出します。
③精製(ろ過)
- 脱ガム:油に含まれるリン脂質、糖脂質などの高分子物質(ガム)を除去します。
- 脱酸: 油に含まれる遊離脂肪酸を除去し、酸化を防止します。
- 脱色: 油の色素を除去し、透明な油にします。
- 脱臭: 油のにおいを除去し、無臭の油にします。
- 脱ワックス(脱ロウ): 低温で油を冷却し、ワックス成分を析出させて除去します。
- 濾過: 不純物を除去し、透明な油にします。
精製(ろ過)の工程で、薬剤が使用されることが多いです。
使用される薬剤は‥
- リン酸:ガム質を凝固させて除去する。
- 水酸化ナトリウム:脱酸に用いられる。
- 活性白土: 油の色素を吸着して脱色する。
- アルカリ: 遊離脂肪酸を中和して脱酸する。
- 助剤: ろ過を効率よく行うための助剤
などがあります。
搾油、抽出した油には食用として使用するには、様々な不純物が混ざった状態になっています。それを薬剤を用いて取り出します。
例えば、脱ロウについて。ロウはロウソクのロウです。油の中にはロウソクの成分が入っていて、このロウの成分があることで固体化しやすくなります。さらっとした液状で油を使用したいために、このロウの成分を取り除きます。取り出したロウは、ロウソクの原料として再利用されます。
薬剤を使用していない場合もあります。
- 遠心分離:油を高速回転させ、比重の差を利用して不純物を分離
- フィルター:微細なフィルターでろ過
- 冷却ろ過:油を冷却することでワックス成分などを固体化させてろ過
- 自然沈殿:油を一定期間放置し、重い不純物を沈殿させる
などの方法を用いて、薬剤を使用せずに不純物を取り除いている油もあります。
また未精製の油や精製度の低い油というのも存在します。
分かり易く言うとオリーブオイルのエクストラヴァージンオイルが精製度合いの低い油です。独特の風味や香りがあるのが特徴で、好きな方と苦手な方と好みは分かれます。
3つの製造方法の比較
「圧搾法」「抽出法」「圧抽法」の3つの製造方法を色々と比較してみます!
- 溶剤や薬剤の使用が多い:抽出法>圧抽法>圧搾法
- 生産効率:抽出法>圧抽法>圧搾法
- 生産コスト高い:圧搾法>圧抽法>抽出法
- 購入価格が高い:圧搾法>圧抽法>抽出法
- 風味や香りが豊か:圧搾法(非加熱)>圧搾法(加熱)>圧抽法>抽出法
- 栄養価が高い:圧搾法(非加熱)>圧搾法(加熱)>圧抽法>抽出法
- 酸化度合:圧搾法(非加熱)>圧搾法(加熱)>圧抽法>抽出法
- 大量生産に向いてる:抽出法>圧抽法>圧搾法
購入する上で比較検討するとしたら、この辺りでしょうか。良い悪いではなく、あくまでも比較です。
考えてもらいたい視点
より自然な製法でより安心安全な油を選ぶのであれば、『圧搾法』一択です。もっと言うと非加熱式の圧搾法で製造された油が最も自然派な油と言えるでしょう。
でも一つ考えてもらいたいことがあります。
圧搾法では原料に含まれる油分をすべて搾り切ることができません。食用油として利用できる油分を残したまま、搾りかすは廃棄されます。
※厳密に言うと飼料やバイオマス燃料に使用され、実際の廃棄は最小限
限りある資源を余すところなく、有効利用するとしたらどの製造方法が良いでしょうか?
自分の健康にとって得なのはどれか?地球にとって得なのはどれか?
持続可能を考えるとどうなのか?
何が正しくて何が間違っているとかではありません。どの視点で物事を見るかによって考え方は変わって来ます。
油を選ぶ上での考える材料にしていただけたらと。
例えば、米油の原料である玄米から取れる油の量は、たったの1%です。これが圧搾法で搾油した場合、0.5%以下しか取れません。
これをどう感じますか?
米油の油分は胚芽やぬか層に含まれています。要は米ぬかが原料になっています。米ぬかだけで計算すると15~20%くらいです。原料に含まれる油分としては少ない方です。多い原料ですと40~50%ほど取ることが出来ます。
油で使用される原料には油分が多いものと少ないものがあるんですね。そういった観点でも製造方法を選ぶ基準になりますね。
原料に含まれる油分
原料から取れる油分は、それぞれ異なります。ここでは油分の多い原料と少ない原料に分け、さらに原料に含まれる油分の割合について一覧にします。
割合に関してはおおよその目安で、品種や栽培条件によって変動します。
油分が多い原料
原料 | 油分割合 |
---|---|
アブラヤシ果肉(パーム油) | 45~55% |
オリーブ | 40~50% |
ココナッツ | 40~50% |
ピーナッツ | 45~50% |
ひまわりの種 | 40~50% |
ごま | 45~50% |
菜種 | 40~45% |
キャノーラ | 40~45% |
紅花 | 30~40% |
チアシード | 30~40% |
えごま | 35~45% |
ヘンプシード | 30~35% |
アーモンド | 35~40% |
マカダミアナッツ | 60~75% |
カカオ豆 | 50~55% |
油分が少ない原料
原料 | 油分割合 |
---|---|
大豆 | 18~22% |
とうもろこし | 12~15% |
米ぬか | 15~20% |
カシューナッツ | 15~20% |
綿実(コットンシード) | 15~20% |
油分と製造方法
油分が少ない原料は圧搾法には向いていません。搾油できないことはありませんが、効率が良くないです。
製造方法で油を選ぶ際に、地球環境や自然を有効活用という観点で考えるとします。圧搾法を選ぶのであれば、油分の多い原料の油を選んでほしいなと個人的に願います。
加熱処理による酸化や劣化に対する個人的な意見
製造工程にて搾油量を増やす目的ないしはろ過、脱臭などの工程で加熱処理をします。
その時に油が酸化する、栄養価が失われる、発がん物質が生成されるなんて言われています。
これに関する個人的な意見を述べますね。
まず酸化するに関しては、オメガ3系の油でなければ過度に氣にする必要はないと考えています。オメガ6系やオメガ9系の油は加熱調理に使える油です。
もちろん『完璧さ』を求めるのであれば、非加熱のものを選ばれると良いかと。
栄養価が失われるに関しても酸化と同様な考えです。
発がん性物質が生成されるについては、これは言い過ぎだと個人的には感じてます。
先日、台湾に輸出した日本産の米油から台湾での基準値を超えるグリシジル脂肪酸エステルが検出されて、全量が廃棄または積戻しになった出来事がありました。
このグリシジル脂肪酸エステル自体には発がん性がありませんが、体内の中でグリシドール脂肪酸エステルに合成されます。このグリシドール脂肪酸エステルに発がん性があると言われてた時があるのですが、現在では「国際がん研究機関(IARC)」に、ハザード評価で「発がん性としての根拠がない」というグループ3というのに分類されています。これはカフェインなどと同じ扱いです。
グリシジル脂肪酸エステルは高温での加熱処理で発生します。
これはじゃがいもを高温で揚げる時にアクリルアミドが発生する現象と似ていているのではないでしょうか。例え製品時にグリシジル脂肪酸エステルが検出されなかったとしても、家庭で加熱調理をする際に発生しているかも知れません。また発生したとしてもカフェインを恐れるのと同等で発がん性はないと分類されています。
※アクリルアミドは「ヒトに対しておそらく発がん性がある」グループ2Aに分類されています
発がん性があるかどうかは正直わかりません。科学的にも完全に証明するのは難しいです。
なので個人的な意見ですが、ご家庭にて加熱調理用の油として使用するのであれば、製造工程の加熱処理に関しては過度な反応はいらないと考えています。
逆に生食で使用する油であれば、非加熱のものを選んでも良いのでは?と考えます。特にオメガ3系の油でとても酸化しやすいので、加熱処理していない圧搾のものを選ぶべきです。加熱処理しているオメガ3系の油はほぼ存在しないと想いますが、あれば要注意です。
ここまでのお話はあくまでも個人的な意見です。「この人が言ってるから安心」みたいな受け取り方はやめてくださいね。常にリスク管理は誰かの意見に委ねるのではなく、自分の経験と勘で選ぶようにしてほしいなと願います。
まとめ
油の製造方法についてざっくりと解説をしましたが、いかがでしょうか。あくまでもザックリ解説で、ポイントだけを抑えてまとめています。ご自身でも調べて確認作業を行ってもらえると嬉しいです。
油の選び方は個人の自由ですが、自分にとって得かだけでなく、その商品を選ぶことで世の中にどんな影響があるのか?そんなことも考えてくれると嬉しいですね。
食の安全を謳う発信者の方や日常でオーガニックなものを選ばれている方を見ていて、自分にとって健康かどうかで善悪の2つに分けられてる方をよく見かけます。
少しでも悪いところを見つけると、それは悪!平氣で批判される方も観ます。その製品には発がん性があるよ、とか。製品名を名指しで否定されるのを見ると悲しいですね。どんな製品にも作り手が必ず存在します。その方がもしその発言を見た時にどう感じるか。自分がその立場だったらどうなのか。
また地球環境の観点から考える等、視点を変えるとどちらが良い悪いは変わって来ます。
正しい間違ってる、良い悪いなどの二元論ではなく、これはこういうもので、あれもそういうもの、といった感じで何がどういうものなのかを知ることから始めてほしいです。それが良いとか悪いではなくそういうものということ。それを知った上で自分はどれを選ぶのか。
この記事がなんか考えるきっかけになれば嬉しいです。
コメント
コメント一覧 (2件)
あくまで、私の考えで、コメントします。
気を悪くされたらごめんない。
圧搾法の搾りかすですが、廃棄せず、土に返して堆肥にしたり、家畜の餌にも可能です。
溶剤抽出法は家畜の餌になりません。
家畜が食べないのです。食べ物として認識しない、薬物なのでしょう。土に返しても土にもどるのかな?この時点で循環から外れているような、、、。
そうして作られた油、溶剤は残っていなくとも自然のものではないような気がします。
実際、胸焼けするのは溶剤の油と聞いた事がありますし、
圧搾の油と似て非なるものではないのかな。
そもそも、油の少ない米から油をつくらなくとも、油の比較的多い菜種や胡麻油で圧搾法はだめなのでしょうか?
なので、米油は買わないです。
米油を買わなければ作らないのにと思います。
黒木さん、コメント有難うございます!コメントとても嬉しいです。溶剤抽出の絞り粕を家畜が食べないというのは、何か情報源はあるのでしょうか?油の絞り粕は大半がサラダ油からの物です。サラダ油に使われる原料はともろこしや大豆が多く、基本的に溶剤抽出です。米油に限った話ではないと思うのですが餌として食べないのはどうなのでしょう‥。僕は畜産の現場にいる訳ではないので、真実はわかりません‥。もし誰かに聴いたとかではなく、一次情報であれば僕も知りたいです!あと根本的なお話をすると豚はともかく牛はとうもろこしも大豆も本来は食べるようにできていません。草を食べる動物です。でも効率化を考えて主にとうもろこし、大豆を食べさせられています。本来食べるものじゃないものを食べているせいで牛の腸は大変なことになっています。それが原因でO-157が発生したとも言われています。
圧搾法の油を選ぶのであれば、僕も記事に書いてあるように菜種油やオリーブオイル、ごま油をおすすめしますよ!良い悪いはないと考えています。米油だけが何か悪者になってますか?米油の利点は循環の側面で見ると廃棄されるぬかを再利用しているところではないですかね。ちなみに米油を推奨してもいません。なんなら油自体を推奨していないです。油の摂り過ぎは身体に良くありませんし、僕は揚げ物もやめましたし肉も食べません。
ちなみに菜種油も昔ながらの菜種は今はほとんど出回ってないんですよね。菜種油の脂肪酸は本来エルカ酸というのが主の油でした。しかし塩の高血圧と同じように根拠に疑問を感じるような実験結果で、エルカ酸は心臓に悪影響があるとされてオレイン酸が豊富になるように品種改良や遺伝子組み換えされたものが菜種の原料になっています。キャノーラはその時に誕生した品種改良菜種です。余談ですが、今個人的にエルカ酸の昔ながらの菜種油を作っている所も探している所です。
僕のスタンスは常に「コレを選べ」みたいなのはやらないようにしています。おすすめの〇〇というのも基本的にやっていません。選ぶのは人それぞれと考えているからです。知らずに選ぶのではなく、どんなものがどんな経路で作られているのか?そこを伝えています。
油をこだわっても食べてる肉のエサが遺伝子組換えといった変なものが入っていたりします。
色々と情報を取り入れた上で、どこまでこだわるかは人それぞれじゃないですかね。長々と失礼しました!